癌転移の問題点の一つに臓器選択性がある。この解明にはある特定の臓器に高率に転移をおこす転移モデルが必要であるが現在のところ肺、肝、脳などの臓器への転移モデルは確立されているものの口腔癌の特徴であるリンパ節転移モデルは非常に少ない。 動物モデルの作製を目的にハムスターDMBA誘発舌偏平上皮癌を用い、そのリンパ節転移を頬嚢に移植することでほぼ100%の率でリンパ節転移を形成する腫瘍モデル(0-1N)を確立できたのでこの転移腫瘍細胞を培養することでリンパ節転移株の樹立を試みた。 培養に用いた腫瘍は0-1N10代目である。植え込み後、20日で細胞は飽和状態になった。倍加時間は7代目で48時間、37代目で12時間とかなり短縮していた。次に培養細胞のリンパ節転移形成能を検索するためにハムスター頬嚢に移植したところ移植したすべてのハムスターに腫瘍の増殖がみられ、又、6-11週の間に顎下リンパ節転移も認められた。 リンパ節転移腫瘍に対するリンパ節由来因子の作用を検索するためにハムスター顎下リンパ節細胞培養抽出液をリンパ節転移細胞培養液に添加し培養した。その結果、対象群と比較して軽度の増殖促進を示したものの逆に抑制的に作用する場合もあった。次に、リンパ節組織ホモジネート抽出液を添加しその増殖活性を調べた。リンパ節抽出液添加での細胞増殖活性は全く認められなかった。
|