研究概要 |
根尖病巣による歯槽骨吸収には種々の細菌やその代謝産物、また宿主の炎症や免疫応答が深く関与していることが明らかとなってきた。本研究ではグラム陰性菌の膜成分であるリポ多糖(LPS)をPorphylomonas endodntalis(P.e.),P.gingivalis(P.g.),Prevotella loesheii(P.l.),Wolinella recta(W.r.)より抽出し、ヒト歯肉線維芽細胞(Ginl)、ヒト骨芽様細胞(Saosー2)に作用させ、その培養上清中のInterleukinー6(ILー6)量を測定した。更に細胞外マトリックス分解に関与しているといわれているPlasmin活性も検索した。<方法>(1)P.e.,P.g.,P.l.,W.r.を大量培養し、hot phenol法にてLPSを抽出した。(2)各細胞を24well plateにまき、confluenceになったら培養液を交換後LPSを作用させ、経時的に培養上清中のILー6量をELISA法で、Plasmin活性を合成基質を用いて測定した。<結果>(1)Ginー1は何も作用させなくとも少量のILー6を産生しており、LPSを作用させるとILー6は約2.5倍に上昇した。Saosー2は何も作用させなくても少量のILー6を産生しており、LPSを作用させても有意なILー6の上昇は認められなかった。しかし、ILー1βを作用させた時は約2倍に、TGFーβでは約3倍に上昇した。(2)Ginー1のPlasmin活性は、LPSを作用させることにより有意に上昇した。Saosー2はLPSを作用させないコントロ-ルの細胞においてもconfluence直後より,Plasmin活性の上昇が見られた。LPSを作用させたものはコントロ-ルに比べPlasmin活性は高かったが、有意差は認められなかった。 <考察>ILー6は破骨細胞に作用することによる骨吸収に、またPlasminは細胞外マトリックスの分解に関与するといわれている。感染根管より分離される菌から抽出したLPSの刺激により歯肉線維芽榜胞のILー6産生とPlasmin活性が上昇することから、これらの菌が根尖病巣の骨吸収に関与していることが示唆された。
|