平成3年は、実施計画に基づき、舌運動解析装置の開発およびその有用性について検討を行った。即ち、舌小帯異常を有する患者の嚥下時の舌運動パタ-ンについて当教室において開発してきた舌運動解析装置を用いて分析し、その特異な舌運動のパタ-ンを明らかにするとともに本装置の有用性を明確にする事を目的とした。今回開発した舌運動解析装置はエレクトロパラトグラフとX線ビデオを同時に記録するものであり、患者の口腔内に装着した10個の端子をもつ人工口蓋板により嚥下時の舌の口蓋への接触様相を1/64秒ずつ表示するとともに、その時の舌の動きを側方からのX線ビデオによって捉え、その両方の記録を同時に一画面に表示できるようにしたものである。本装置により舌小帯異常を有する患者の嚥下時の舌運動の様相を調べたところ、小帯の異常の程度が大きい症例では舌の口蓋への接触様相は正常者と異なり、特に口蓋後方部での舌の接触が弱く、かつ接触時間も短いことが明らかとなった。この事は同時に記録したX線ビデオによる舌運動の解析から、これらの患者においては嚥下時に舌背の挙上が正常者に比べてスム-ズさに欠け、舌背部が波をうつような運動をすることと対応する事が示された。これらの解析結果より、舌小帯の異常は、単に小帯の付着部位である舌尖部の運動を障害するのみでなく嚥下時の舌の運動パタ-ンに大きな影響を及ぼす事が明らかとなった。このように本解析システムは従来の解析装置に比べて舌の運動をより詳細に解析することができ、今後、不正咬合の舌運動パタ-ンを解析する研究を行っていくうえできわめて有用であることが示された。
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