平成4年度は、平成3年度の検討において有用性が示された舌運動解析装置、すなわちエレクトロパラトグラフとX線ビデオの同時記録装置を用いて、その臨床応用とデータの蓄積を行った。また、あわせて舌圧とX線ビデオの同時記録法の開発も行った。エレクトロパラトグラフとX線ビデオの同時記録法については平成3年度に引続き、舌小帯異常を有する患者について被験者を増やし検査を進めた。その結果、舌小帯の強い症例では舌運動に円滑さを欠き、全体として波動状の運動を示しており、そのような所見は従来のペーストパラトグラフの結果と対応していた。また舌小帯異常の強い症例の中にも安静時における舌背の位置が高位にあるものについては、比較的スムースな舌運動を示すものもあり、これらは安静時の舌の位置と関係があることが示唆された。舌圧とX線ビデオの同時記録については、被験者の上顎に2個の圧センサーを埋め込んだプレートを装着し、嚥下時の口蓋への圧力変化を経時的にペンレコーダに記録し、その時の舌の運きをX線ビデオと同時記録した。本解析方法を用いて舌小帯異常を有する患者において舌小帯伸展術前後での検査を行ったところ、術後口蓋後方正中部での圧力が大きくなり、舌運動もスムースになった症例も認められた。これらの解析結果から舌小帯伸展術を行うことにより、実際に口蓋への圧力分布が変化することが確かめられ、このことからも舌小帯異常が嚥下時の舌運動に関して大きな影響を及ぼしていることが明らとなった。このように舌圧とX線ビデオの同時記録法も不正咬合の舌運動パターンを解析していく上で有用であることが示された。
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