研究概要 |
本年度は昨年度に引き続き,フッ素徐放性レジンの矯正装置接着部位周辺における歯質強化の効果と矯正用接着剤としての実用性につき以下の検討を行なった。1.ヒト抜去小臼歯にフッ素徐放性レジンでブラケットを接着させ,ブラケット装着から24時間,1週間,1ヶ月間経過後,ブラケット接着部位周辺エナメル質に取り込まれたフッ素量をエナメル生検法を用いて測定した,2.ヒト抜去小臼歯にフッ素徐放性レジンでブラケットを接着させ,ブラケット装着から24時間,1週間,1ヶ月間経過後,ブラケット接着部位周辺エナメル質の酢酸に対するカルシウム溶出量をイオン電極法を用いて測定し歯質耐酸性を評価した,3.#600エメリーペーパーで平坦に研削した牛歯エナメル質にリン酸エッチングしたのちフッ素徐放性レジンで金属ブラケットを接着し,37℃水中へ所定期間浸漬後,フッ素徐放性レジンのせん断接着強さを測定した。 その結果,1.ブラケット接着部位周辺エナメル質のフッ素取り込み量は,ブラケット装着期間が長くなると増加する傾向を示し,ブラケット接着から1ヶ月経過後ではエナメル質表面より1μmの深さで3265ppmの値を示した。これは歯質強化に有効とされるフッ素取り込み量であった。2.ブラケット接着部位周辺エナメル質の酢酸に対するカルシウム溶出量は,ブラケット装着期間が長くなると減少する傾向を示し,ブラケット接着から1ヶ月経過後ではフッ素徐放性レジンを応用しなかったものに比べ約31.6%減少した。3.牛歯エナメル質にフッ素徐放性レジンでブラケットを接着したときのフッ素徐放性レジンのせん断接着強さは,接着24時間経過後で平均94.1kg/cm^2,接着6ヶ月経過後で平均183.6kg/cm^2で臨床的に応用可能なレベルの接着強さを示した。
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