研究概要 |
職域集団を対象とした歯科保健プログラムの効率化を目的として,(1)歯周疾患の疫学的指標であるCPITN(WHO)と歯周疾患迅速診断テスト(BANA test)との関連性,(2)検診受診者を対象に質問紙調査を実施し,歯周疾患の自覚度と診査所見との関係について検討した。 (1)CPITN(WHO)とBANAテスト(Perioscan^<TM>)との関連性について 18〜59歳までの従業員161名を対象にCPITNにより評価し,同時に上顎右側第一大臼歯と下顎左側第一大臼歯の近心頬側および舌側部よりプラークを採取し,BANAテストに供した。CPITNのコード別の強陽性率は19.0%(Code 0),29.9%(Code 1),21.4%(Code 2-),37.0%(Code 2+),50.0%(Code 3)となり,Code 2-を除けばCPITNとBANAテストの結果がほぼ比例関系にあることが確認された。なお,Code 2+,Code 2-は出血の有無によりWHOのコードをさらに分類したものである(Community Dent Oral Epidemiol 1988; 16:109-11.)。また,Code 0と1のぞれぞれにおいて診査時での歯垢付着の有無によりBANAテストの陽性率に有為な差が認められた。 (2)疾患の自覚度の診査所見(CPITN)との関係について 19〜60歳までの従業員250名を対象として,口腔内を6区分したセクスタントごとに歯肉の異常(歯周疾患の有無)を質問紙法で調査し,診査所見との一致度を検討した。ポケット深さ3mm以下で出血をもつセクスタントの自覚率は3.1%,浅いポケット(4-5mm)では9.5%,深いポケット(6mm^+)では14.7%と重症になるに従い高くなるがきわめて低率であった(健全セクスタントは5.1%)。このように自覚度が低いため検診の重要性が確認されたが,今後は聞き取り法の検討とともに,セルフチェックのための効果的な健康教育の確立が課題である。
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