研究概要 |
本研究は、小児歯科臨床で遭遇する種々の形成不全歯について、形態学的、組織学的観察ならびに、歯質の化学組成について分析して、歯の構造の異常の発生機序を検索することが目的である。 amelogenesis imperfecta,dentinogenesis imperfectaの症例やカルシトニン分泌過剰症を疑わせる症例の資料を採取しして、光学顕微鏡的観察ならびに透過電子顕微鏡による観察を行った。 amelogenesis imperfectaのエナメル質では、球状型の石灰化およびLiesengang環紋様の交互に並んだ無機質を認めている。また、小柱構造を拡大したTEM写真から、2種の大きさのアパタイト型結晶が認められた。石灰化不全を有する低形成型amelogenesis imperfectaであり、同一歯で両者を共存する報告は新知見であった。カルシトニン分泌過剰症では、カルシトニンの分泌量が287ピコグラム/ミリリットルと異常に高い値を確認した。この症例の乳歯根外側の吸収部には破歯細胞が認められず、骨様硬組織像が観察された。また、細胞成分を封入したセメント質の肥厚が観察された。多数歯にわたる歯の交換の遅延の原因として、カルシトニン分泌過剰が確認された最初の報告である。odonto dysplasiaのGhost teethの歯根形成について、従前の定説では象牙質全体の異形成により、歯根形成不全が生じるとされていたが、臨床経過ならびに抜去歯の組織所見から、歯冠部の外套象牙質のみ異形成であり、根尖側の象牙質に形成異常はとくにみられないことを解明した。
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