研究概要 |
本研究では(1)ミダゾラム経鼻投与(0.2mg/kgと0.3mg/kg)の血漿濃度と鎮静度の推移および循環・呼吸に及ぼす影響(2)極めて歯科治療が困難な心身障害者に対するミダゾラム経鼻投与と笑気吸入鎮静法併用の臨床効果と効果に影響する要因の検索からさらに尿中カテコールアミン排泄に及ぼす影響について検討した。 1.ミダゾラム経鼻投与の鎮静効果は投与5-10分後に発現し,投与20分後には安定した効果が得られ,投与用量による鎮静度の相違は全ての過程において認められなかった。2.ミダゾラムの血漿濃度は両群とも20分後に最大となり,0.3mg/kg投与が0.2mg/kg投与に比べ相対的に高い濃度を維持しているものの,その個人差は0.2mg/kg投与に比べ大きくなっていた。3.両投与用量とも臨床的に問題となる循環系の変化は示さなかった。しかし両群とも下顎挙上を必要とする呼吸抑制がみられる症例があり,0.3mg/kg投与において顕著であった。4.心身障害者に対する歯科治療時の臨床効果は0.2mg/kg投与66.7-89.5%,0.3mg/kg投与83.3-95.2%で両群間に統計的な差は認められなかった。しかし,不快事項(呼吸抑制,嘔吐)が0.3mg/kg投与に多く認められ,0.2mg/kg投与が臨床上優れていると考えられる。5.回復時間の平均は0.2mg/kg投与129.38分,0.3mg/kg投与131.89分で両群間に差は認められなかった。6.ミダゾラム経鼻投与と笑気吸入鎮静法併用下の歯科治療時の尿中カテコールアミンの排泄は笑気吸入鎮静法単独応用に比べ有意に抑制されていた。7.臨床効果は薬液の投与用量,薬液総量,性別や患者の体重,発達年齢には影響されず,障害の種類,暦年齢との関連が強く認められた。すなわち,自閉症,低年齢児の臨床効果が低くなっていた。
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