低反応性ジエンとの不斉環化付加を実現するマレイミド類の複素環天然物合成への応用

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03670995
• 研究機関: 富山医科薬科大学
• 研究代表者: 荒井 謙次 富山医科薬科大学, 薬学部, 助手 (10115157)
• キーワード: (+)-エリオカニンA / (+)-エリオカニンC / スルフィニルマレイミド / ディールス・アルダー反応 / アシルイミノ付加 / ジアステレオ選択性 / キラル合成 / フラン

研究概要

2ーexo-ヒドロキシ-10-ボルニル基をスルフィニルリガンドに用いることにより、高い反応性を持つ光学活性スルフィニルマレイミド類の合成法を前年度により確立した。本方法論により、N-TBDMS基、N-P-メトキシベンジル基を持つスルフィニルマレイミドを合成した。これらジエノフィルは,シクロペンタジエンのみならず低反応性ジエンであるフランとのディールス・アルダー反応において高いジアステレオ選択性が観察された。
1.N-TBDMSスルフイニルマレイミドとシクロペンタジェンとの反応付加体から、イミドカルボニル基の位置選択的還元、ヨウ化サマリウムによる脱硫をへて、γ-ヒドロキシラクタムに導き、高位体選択的分子間N-アシルイミノ付加、FVPを活用し、(+)-エリオカニンAおよび(+)-エリオカニンCの合成に成功した。
2.N-p-メドキシベンジルスルフィニルマレイミドとフランとのディールス・アルダー反応により得られた付加体から、同様のN-アシルイミノ付加により、アルキル鎖を導入した。得られた7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプテン縮合環系は、キシレン還流下容易にレトロディールス・アルダー反応が進行し、アルカロイド合成に有用な鍵物質、Δ^3-ピロリジノン体のキラル合成に成功した。一方、ディールス・アルダー反応付加体に対し、N-アシルイミノ付加を二度行うことにより、異なるアルキル鎖を高立体選択的(cis)にピロリジン母核に導入することに成功した。レトロディールス・アルダー反応はスムーズに進行し、2,5-cis二置換ピロリジン体の構築に成功した。
このフランをジエンに用いる合成方法論は、FVPに比べ、緩和な条件でレトロディールス・アルダー反応が進行するため、熱によりラセミ化しやすい生成物についても、光学純度を損わない優れた方法であることが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] Y.Arai,M.Matsui,T.Koizumi,M.Shiro: "Powerful Dienophiles for Asymmetric Diels-Alder Reactions:α-(2-exo-Hydroxy-10-bomylsulfinyl)maleimides" Journal of Organic Chemistry. 56. 1983-1985 (1991)
• [文献書誌] 荒井 謙次: "新規光学活性α,β-不飽和スルホキシドの合成と不斉付加反応への展開" 薬学研究の進歩. 7. 74-86 (1991)
• [文献書誌] Y.Arai,T.Kontani,T.Koizumi: "A Novel Route to Bicyclic Alkaloids Using a Tandem Diastereoselective Acyliminocyclization and Retro Diels-Alder Reaction Sequence:Synthesis of (+)-Indolizidne and (+)-Laburnine" Chemistry Letters. 2135-2138 (1991)
• [文献書誌] T.Takahashi,A Fujii,T.Sugita,T.Hagi,K.Kitano,Y.Arai,T.Koizumi: "Asymmetric 1,3-Dipolar Cycloaddition of Chiral Sulfinylethenes with 1-Methy1-3-oxido-pyridinium and Some Nitrones" Tetrahedron:Asymmetry. 2. 1379-1390 (1991)
• [文献書誌] Y.Arai,T.Kontani,T.Koizumi: "Synthesis of(+)-Elaeokanine A and (+)-Elaeokanine C Based upon a Novel Approach Involving Diastereoselective,Nucleophilic Addition to N-Acyliminium Ion and Retro Diels-Alder Reaction" Tetrahedron:Asymmetry. 3. 535-538 (1992)
• [文献書誌] Y.Arai,A.Fujii,T.Ohno,T.Koizumi: "Stereocontrol in Intermolecular Nucleophilc Addition to N-Acyliminium Ion Directed by a Bicyclo[2.2.1]heptene or 7-Oxabicyclo[2.2.1]heptene Group.A Novel Route to 5-Substituted 3-pyrrolin-2-ones of High Optical Purity" Chem.Pharm.Bull.40. 1670-1672 (1992)