研究概要 |
1.同位元素で標識した化合物を合成するにはできるだけ最後に近い工程で同位元素を導入する方法が望ましい.標的化合物の塩基部の合成はN-(メトキシカルボニル)-L-ビニルグリシンを用いるHeck反応によって達成されることが分かっているので,このもののメトキシカルボニル基をベンジロキシカルボニル基あるいはtert‐ブトキシカルボニル基に変えてHeck反応を行い,生成物を脱保護,メチルエステルとした後にメトキシカルボニル基を導入することを計画した.このHeck反応の収率は窒素上の置換基によって大きく影響され,ベンジロキシカルボニル体では結果が悪く,tert-ブトキシカルボニル体を用いるべきであることが判明した. 2.本研究担当者らがすでに開発しているアラニン誘導体を構成部分とする分子内塩型ホスホニウム塩を用いるWittig反応について同様に窒素上の保護基の影響を検討したところ,ベンジロキシカルボニル基とtert-ブトキシカルボニル基のみがポジティブな結果を与え,これらのうちでは前者の方が優れており,生成物の光学純度も満足すべきものであった. 3.1,2-グリコール類と塩化オキサリルによって環状炭酸ジエステルが生成するという反応が広範囲の1,2-グリコールに普遍的なものであることが判明した.この反応で同時に生成するシュウ酸ジエステルとの生成比が,1,2-グリコールの構造に大きく依存することが分かった.この現象は,6員環状のテトラヘドラルな中間体の開裂がステレオエレクトロニックな要因に支配されていると説明することによって理解しえた.
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