研究概要 |
Discorhabdinアルカロイド類(discorhabdin A-D)は、同一分子内にアザスピロジエノン環とインドロイミノキノン骨格を合わせ持つ興味深い分子構造を有し、また何れも強い細胞毒性を示すことから、制がん剤のリード化合物としても、期待されている化合物群である。これまで多くの合成化学者により、競って合成研究がされてきたが、discorhabdin合成においてはi)酸化に弱いインドール環存在下でのアザスピロジエノン環の合成、ii)pyrrolophenanthroline環でのイミノキノンの合成、並びにiii)橋かけS原子の立体選択的な合成、の3つの課題がその全合成を困難な物としていた。我々は、平成3年度の研究により、超原子価ヨウ素化合物の特性を利用してi)を、またpyrrolophenanthrolineやindoloquinone環でのイミノキノンの新合成法を確立してii)を解決し、これらを応用してdiscorhabdin類の基本構造を有し、かつ活性も強いdiscorhabdin Cの世界で最初の全合成に成功した。本年度は、チオエーテル結合と不斉スピロジエノン構造を持つ他のdiscorhabdin類合成のために、研究計画1)に従い、チオエーテル結合導入法の開発を目的として、研究を行った。即ち、discorhabdin Cの全合成においては、チラミンをアザスピロジエノン部の構築単位として用いたので、N原子の隣にS原子を導入したチラミン誘導体をPummerer反応を利用して合成した。現在、更にこのものにS原子を不斉導入することを検討中である。また、優れた制がん剤創製のための種々のdiscorhabdin誘導体の合成のための基礎研究として、種々の大きさのアザ環を持つアザスピロジエノン環の構築にも成功した。目下、研究計画に従い、discorhabdin類(A,B,D)の合成を目標として研究を推進中である。
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