研究概要 |
種々の化学構造をもつタンニンのうちで,まず植物体内でのエラジンタンニン類生合成上の要の一つであり,分布も広く,かつ結晶性であるgeraniinについて検討した.このタンニンは結晶状態では水にほとんど不溶であるが,ゲンノショウコなどの植物から抽出して得たエキス中ではよく溶解しており,これを析出させるのは容易でない.したがってこの状態においてgeraniinは,他成分と複合体を形成して可溶化している可能性がつよいと思われる.今回の実験において,フェノ-ル性成分としてはほとんどgeraniinのみが認められるまでに精製されながら,結晶geraniinの析出しないフラクションを粉末状に得て,仮に「水溶性ゲラニイン」と名付けることにした.水溶性ゲラニインは結晶性geraniinと比べて,マウスを用いた実験で便秘時の時腸輸送能を著しくつよく亢進すること,および下痢時の消化管輸送能を著しく抑制することが判明し,ゲンノショウコの整腸作用にこの「水溶性ゲラニイン」が大きく関与していると考えられる. この複合体と見られる「水溶性ゲライニン」について,さらにイオン交換樹脂カラムによる脱腸イオン,吸着性の個相を用いない遠心向流分配クロマト(CPC)による分画を行ない,各フラクションの活性の測定を行ない,水溶性ゲライニンおよび分画画分のNMR測定による構造解明を現在実施している.また水溶性の高いgeraniinic acid Aはアミノ酸と共存していることを認めたが,今回の水溶性ゲラニインについての分画の結果はアミノ酸の存在を示さなかった.
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