研究概要 |
最近、我々は3価ヨウ素原子上の炭素配位子に不斉源を組み込んだ最初の光学活性超原子価有機ヨウ素(III)化合物として、(R)ー2,2'ーbis(diacetoxyiodo)ー1,1'ーbinaphthyl及び(R)ー2ー(diacetoxyiodo)ー1,1'ーbinaーphthylの合成に成功し、超原子価ヨウ素原子上で分子内擬似回転による立体的異性化反応が容易に進行することを明らかにしてきた。 今回、以上の結果を基盤として、初めての超原子価不斉ジアリ-ルヨ-ドニウム塩であるbinaphthylyl(phenyl)iodonium tetrafluoroboratesの合成を計画し、上記ビナフチルヨ-ジナン類とシリルベンゼンとの反応を検討したが、目的の不斉ジアリ-ルヨ-ドニウム塩を得るには至らなかった。ところが、より反応性の高いテトラフェニルスタンナンをLewis酸存在下に作用させたところ、不斉ビナフチルヨ-ドニウム塩が効率良く生成した。(R)ー(+)ーMTPAとの配位氏交換により、その光学純度は97%以上であると決定され、ここに初めて不斉超原子価ジアリ-ルヨ-ドニウム塩の合成に成功した。その特異なT字型構造及び絶対配置をX線結晶解析により確認した。 合成した不斉超原子価ジアリ-ルヨ-ドニウム塩を用いて各種カルボニル化合物のα位フェニル化反応を実施したところ、現在その不斉収率は約40%程度ではあるが、初めてのα位不斉アリ-ル化反応の開発に成功した。本反応は超原子有機ヨウ素化合物の示す特異な反応性に基づくものであり、この成功は尿酸尿症活性を有する医薬品(R)ーindacrinoneの不斉合成が、カルボニル化合物のα位不斉フェニル化反応により達成可能であることを強く示唆する。
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