研究概要 |
ウリ科に属する日本産のキカラスウリの根より得られた新規タンパク質KarasurinーAは、同じウリ科の植物より得られたTrichosanthin及びdーTrichoーsanthinとその一次構造上高い相同性を有しており、生理活性の面においても、タンパク質合成阻害活性を有するRIPグル-プの他のタンパク質同様、堕胎作用、in vitroレベルでの抗腫瘍効果を有することを明らかとした。今回、更に、KarasurinーAとその構造が酷似するタンパク質KarasurinーBについて構造解析を行った。KarasurinーBはAに対し約1/6の含量で存在し、分子量、アミノ酸組成およびN末端側のアミノ酸配列の分析結果においては違いが見られず、等電点電気泳動、及びイオン交換クロマトグラフィ-において異なる挙動を示す。現在迄に97%のアミノ酸配列を決定したが、229番目のアミノ酸がKーAにおいてアスパラギン酸であったのがアスパラギンである相異点を見い出したのみであるが、この事実はKーBの等電点が10.2でKーAが10.1である事実を良く支持している。一方、低分子量のタンパク質にも注目し、その分離、精製、構造決定を行った。RTー4と仮称する分子量5000のタンパクは高塩基性タンパク質で、His,Lys,Argの含量は2090でありN末端をグリミシンとし、26残基目のTyr迄の配列は決定したが、未だ推定分子量とアミノ酸配列分析の結果から導びかれる分子量との差について明らかではなく、今後更に検討を要する。KarasurinーAはヒト悪性絨毛上皮癌由来のBewo細胞の増殖に対して阻害効果を有するばかりでなく、他の癌由来株化細胞、B16、GH3、P388ーD1、HeLa,KB全てに対して細胞数の減少を引き起こした。一方、KーAのペプチド断片であるBSー3はC末端側54残基に相当し同様な増殖阻害効果の有無を検討したところ、BeWo、B16細胞に対して特異的な活性を示した。
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