研究概要 |
基本的な化合物のピクラートの系統的な結晶構造解析を行っており、平成3〜4年度には、芳香族炭化水素(ベンゼン、o-キシレン,p-キシレン、フェナントレン)、芳香族アミン(アニリン,N,N-ジメチルアニリン,N-メチルアニリン,o-,m-,p-フェニレンジアミン)、芳香族キノン(1,4-ナフトキノン)芳香族複素環化合物(キノリン及びイソキノリン)のピクラートの結晶構造を明らかにし、結合様式等について興味ある知見を得た。 平成5年度は、前年度からの継続として、2-メチルキノリン,キノリンN-オキシド,4-ジメチルアミノピリジン,等の芳香族複素環化合物のピクラートのX線結晶構造を解明し、それらの化合物のpi結合を含む結合様式を明らかにした。 更に核酸構成単位である、アデノシン、基本的アミノ酸のグリシンのピクラートおよび局所麻酔薬のプロカインのピクラートのX線解析に成功した。 アデノシンのピクラートはピクリン酸のフェノール性水酸基とアデノシンのプリン環の1位の窒素原子と6位のアミノ基の間でイオン性の水素結合が観察され複雑な水素結合のネットワークが明らかになった。グリシンに関しては、2分子のグリシンが1分子のピクリン酸と結合子複雑な水素結合をしていることが明らかになった。アデノシン、グリシンの結果は、更に局所麻酔薬のプロカインのピクラートの結合構造に関して、第十二改正日本薬局方に塩酸プロカインのピクラートの融点測定の確認試験が採用されているが、その融点が一ピクリン酸塩か二ピクリン酸塩かについては、明記されておらず、報告されている融点にも一致していない。そのため、一ピクリン酸塩と二ピクリン酸塩を合成し、X線結晶構造解析によりそれぞれの結晶構造と融点の関係を明らかにした。日本薬局方の確認試験は、二ピクリン酸塩のものであることを解明し、同時に融点も訂正することができた。
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