研究概要 |
新たに二十種の生薬を入手し、Ca^<2+>拮抗阻害作用を指標として天然薬物の一次スクリ-ニングを行ったが、碇草ラウオルフィア、阿仙薬、大腹皮、白鮮皮などに強い活性が見られた。これらは活性成分研究の対象として興味深いものである。予備研究で強いCa^<2+>拮抗阻害作用を示したインチンコウ、オウゴンについて活性成分の単離、精製を行った。インチンコウでは有機溶媒抽出画分に活性が見られ、薄層クロマトグラフィのパタ-ンからヘキサン、メタノ-ル画分の分離を行うことにした。ヘキサン画分から各種クロマトグラフィを組合せてscoparone(I)、capillin(II)、メタノ-ル画分から化合物3(III)、(+)ーsesamin(IV)、5,6,7ーtetramethoxycoumarin(V)、6ーmethoxy7,8ーmethylenedioxycoumarin(VI)、cirsimaritin(VII)、capillarisin(VIII)、chrysoeriーol(IX)、2ー(pーhydroxyphenoxy)ー5,7ーdihydroxychromone(X)、arcapillin(XI)、apigenin(XII)、capillaーrin(XIII)、(+)ー1ーphenylー2,4ーhexadiyneー1ーol(XIV)、eugenol(XV)を得た。オウゴンからクロロホルム画分を探索してwogonin(XVI)、skullcapflavone I(XVII)、II(XVIII)を単離した。化合物3は新物質で合成による構造決定が現在進行中である。またIV、V、VI、VII、IX、XIIXIVはArtemisia capillaris(インチンコウの基原)から初めて単離されたもので、本生薬の詳細な化学成分情報が明らかになった。Ca^<2+>拮抗阻害活性はクマリン(I,III,V,VI)、フラボン(VII,IX,XI,XII,XVI,XVII,XVIII)、クロモン(VIII,X)、アセチレン誘導体(II,XIII,XIV)のいずれにも見られ、10^<ー4>〜10^<ー6>Mの比活性を示した。インチンコウ、オウゴンのCa^<2+>拮抗阻害活性は以上の多様な成分群の総体としての作用による結果と考えられる。今後これらの化合物を先導化合物としてより比活性の高い誘導体をつくるのが課題であると考えている。
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