研究概要 |
海洋微生物から単離されたオキサチアゼピン環を有するβ-カルボリンアルカロイド,ユーディストミン(1)は強い抗ウイルス活性を持つ化合物である.(1)の硫黄原子がメチレンに置き換わった12-カルバユ-ディストミン類縁体(8〜11)の合成と抗ウィルス活性の検討を目的にして,昨年度までにアゼチジン体(2)を出発原料にしたオキサゼピン体(4)を経由するα-アミノ体(8)の合成に成功している.これらの知見を元にして今年度は次の事柄を明らかにした.(i)β-アミノ体(9)を合成するためにはβ-エステル体(5)のジヒドロ体を加水分解して対応するカルボン酸を得る必要がある.通常のアルカリ加水分解では異性化が進行するため,種々条件を検討した結果AlBr_3-EtSH法が良い.(ii)得られたカルボン酸を用いて混合酸無水物法,クルチウス分解によりβ-アミノ体(9)を合成できた.(iii)インドール無置換体(10,11)を合成するには保護基として-SO_2Phが適当である.(iv)アゼチジン体(3)を出発原料にして,オキサゼピン体(6あるいは7)を経由する接触還元,Mg/MeOHによる脱保護,AlBr_3-EtSHによる加水分解,次いでクルチウス法によりα-アミノ体(10),β-アミノ体(11)を合成できた.化合物(11)は当初最終目標にした天然ユーディストミンに立体構造も対応する12-カルバユーディストミンである.(v)合成した4種のアミノ体について抗ウイルス活性を検討したところ,インフルエンザウイルス,ライノウイルスなどに対しβ-アミノ体(9および11)のみに活性が見られ,中でも(11)はかなり強い活性を示した.
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