研究概要 |
多機能な作用を有する新規抗炎症薬の開発を目的としてピロキジカム(抗炎症薬)とトラニラスト(抗アレルギ-薬)の構造をハイブリッドした化合物である2'ーCarboxy1ー4ーhydroxyー2ーmethylー2Hー1,2ーbenzothiazineー3ーcarboxanilide 1,1ーdioxideおよびその誘導体を合成した。合成した化合物について抗アレルギ-作用を検討したところ、これらの化合物の中で2'ー(Tetrazoleー5ーyl)ー4ーhydroxyー2ーmethylー2Hー1,2ーbenzothiazineー3ーcarboxanilide 1,1ーdioxideにトラニラストよりも強いラット腹腔浸出細胞からのヒスタミン遊離抑制作用及びトラニラストと同程度のラット48時間homologousPCA反応抑制作用のあることが確認された。またこの化合物の抗炎症作用についても検討したところ、本化合物にマウスのカラゲニン誘発足蹠浮腫に対する抑制作用のあることが見いだされた。この作用は、ピロキシカムの約10分の1程度であったが、ピロキシカムが主として有する抗炎症作用機序であるプロスタグランジン生合成抑制作用は、本化合物には全く認められなかった。このことは、本化合物の抗炎症作用が従来より知られている非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とは全く異なった作用機構により発現していることを示すものであると同時に、NSAIDの最も重大な副作用である潰瘍形成作用を有していないことを示唆している。事実、本化合物には潰瘍形成作用が全く認められず、それどころか逆に種々の粘膜壊死物質による胃潰瘍形成に対する防御作用(サイトプロテクション作用)のあることが見いだされた。以上これらの結果は、二つの異なる薬物を構造的にハイブリッド化することにより新しい多機能型薬物が創製できることを実際に証明したものであると考えられた。
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