1.FvおよびFabの比較 平成4年度に確立された方法に基づき、FvフラグメントおよびFabフラグメントの抗原認識機構を、抗原認識部位のミクロ環境の変化、抗原ー抗体間の距離情報およびCDRループの運動性を通して明らかにした。 FabフラグメントのV_Lドメインに存在するTyr残基およびV_L-V_Hドメイン界面に存在するTyr残基は、抗原非存在下において速いH-D交換速度を示し、抗原結合に伴いその速度が減少した。この結果はFvフラグメントでの結果と一致した。しかし抗原存在下および非存在下でのH-D交換速度の絶対値をFabフラグメントとFvフラグメントで比較すると、Fabフラグメントの方が1桁以上遅い値を示した。従ってV領域にC領域が加わることでV領域の安定性が向上するものと考えた。さらにFabおよびFvフラグメントのTm(熱変性温度)をDSCにより測定したところ、FabフラグメントのTmはFvのそれと比べて顕著に高い値を示し、H-D交換の結果を支持した。 2.コンピュータグラフィクッスによる抗原認識部位の構築 前述のNMRより得られた情報を拘束条件として用い、分子動力学計算を行った。X線結晶構造解析の結果と組み合わせることで、抗原存在下での抗原認識部位の立体構造を求めた。
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