電位依存性Kチャネルのイオン通過孔予想形成部位(H5領域)と同様な一次構造を持つポリペプチド(H5ペプチド)を合成し、脂質膜との相互作用を調べた。H5ペプチドはその構造中にトリプトファン(Trp)を2残基有するので、Trpの蛍光測定により、膜とH5ペプチドとの相互作用およびH5ペプチドの膜中における存在位置を確かめた。Trpの蛍光位置およびヨウ化カリウムやアクリルアミドによる蛍光消光の結果から、H5ペプチドのTrp残基が膜中に存在することが示唆された。CDスペクトルから膜中における二次構造を調べた結果、リポソームとの相互作用によってβ構造の割合が増大することがわかった。このH5ペプチドは脂質平 面膜にイオンチャネルを形成した。以上の結果より、電位依存性KチャネルのH5領域は膜中に埋まりβ構造をとって膜を貫通してイオンチャネルのイオン通過孔を形成して得ることが示された。 電位依存性NaチャネルのS4セグメントは塩基性アミノ酸が一定残基毎に存在するという特徴的な構造を有する。この特徴を模した種々のモデルペプチドを合成し膜との相互作用を調べた。その結果、これらのペプチドは膜にカチオン選択性のイオンチャネルを形成することが明らかになった。このような相互作用・チャネル形成において、ペプチドの長さ、ヘリックス構造をとッた場合の両親媒性の様子、疎水性アミノ酸の側鎖の大きさ、親水性アミノ酸の電荷の種類等、多くの因子が影響を与えていることがわかった。今後、このような因子の影響をより定量的に評価することが重要であり、このような基礎データを集積することにより、複雑なイオンチャネル蛋白質のような膜蛋白質と脂質二重層膜との相互作用に関する研究に貢献できると思われる。
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