研究概要 |
計画した4研究課題について以下に順を追って記す。課題1:スペルミジン合成酵素の活性部位構造を解明する研究の一環として,活性部位にスルフヒドリル基があること,および,不可逆的標識化剤の一つとして,4ーアジドアニリンが利用できそうであること,などを明らかにしてきた。また,本研究に関連して,酵素活性測定に有用な ^<14>Cーメチル標識脱炭酸化Sーアデノルシメチオニンの高収率化学合成に成功した。 課題2 10余種のポリアミンアナログを固定化したアフィニティ担体を調製し,スペルミン合成酵素の精製に応用した。 課題3 蛍光標識誘導体として,N^4ークマリルメチルスペルミジンを合成した。また,安定同位体標識誘導体として,N^4ーメチル (^<13>C)スペルミジンを合成した。 課題4 ラット肝癌由来HTC細胞を使い,その増殖にポリアモンがどのように関わっているかを調べために,ボリアミン生合成阻害剤および多くのスペルミジンアナログを駆使して詳細に検討した。すなわち,ODC阻害剤であるAOAPの投与によりプトレシン,スペルミジンを検出限界以下にして,増殖停止した細胞に種々のスペルミジンアナログを投与して、その増殖回復を調べた。その結果,大部分のアナログでは、3日目までその増殖が回復したが,以後停止することがわかった。これに微量のスペルミジンを加えておくと,調べた8日目まで正常な増殖を続けた。また,当教室で開発した強力なスペルミン合成酵素阻害剤APCHAを用いて,スペルミンを検出限界以下にして調べた実験結果を総合すると,HTC細胞の増殖には,微量のスペルミジンが必ず必要であり,このほかに構造特異性にはそれほどこだわらない多量の有機塩基が共存すればよいとの結論を得た。現在,微量スペルミジンの作用部位として,予想されるものが何かを検討中である。
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