研究概要 |
医薬,農薬及びそれらの原料,中間体等の有機化合物の有害性を,その分子構造から予測するための推算式の創出と信頼性の評価を目的とする。推算式の創出には,既存デ-タの定量的構造活性相関(QSAR)を利用し,QSARの解析には筆者らにより開発されたファジィ適応最小二乗法(FALS)のアルゴリズムに改良を加えて使用する。また有害性(安全性)として,今回は生分解性を対象とした。平成3年度の研究の概要は次のとおりである。 1.FALSの改良を行った。有害性デ-タのような出典の異なる大量デ-タを一括して解析するためには,活性は等級化して扱うのが適当である。FALSでは,各等級をファジィ化し,メンバ-シップ(MS)関数を設定し,各化合物のMS関数値の総和が最大となるような相関モデル(活性推算式)を創出する。大量デ-タへの適用と信頼性の向上のために,従来のアルゴリズムに改良を加え,FALS91を開発した。主な改良点は,繰り返し最小二乗法計算による識別関数の創出に際し,補正を2ステップで行い,ステップ1では適応最小二乗法(ALS81)のアルゴリズムを利用して解がロ-カルミニマムに陥るのを防止し,ステップ2にファジィ理論によるMS関数を利用し,バランスの良い分類が円滑に達成できるようにした。 2.log Pの推算法の改良を行った。有機化合物の有害性には,分子の物理化学的性質,特に疎水性が関係していると思われ,多様な構造に適用可能な簡易推算法を開発した。 3.生分解性デ-タの収集を行った。信頼性の高い生分解性予測式を創出するためには,解析の対象とするファクトデ-タの質と量が重要である。主として化審法に基づく申請資料をデ-タベ-ス化した(財)日本化学物質安全・情報センタ-の資料から,数百個のデ-タを収集した。
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