研究概要 |
構造的に多様な有機化合物の有害性を,その化学構造から予測するために,既存データの定量的構造活性相関(QSAR)に基づく推算式を創出し,その信頼性を評価することを目的とする。既存データの出典が多岐にわたるため,有害性の尺度としては等級を用いるのが適当と考えられ,等級データのQSAR解析に筆者らが開発したファジィ適応最小二乗法(FALS)を使用する。予測の信頼性を高めるためのFALSの改良,及び有害性に密接に関連していると思われる分子の疎水性の推算法の開発を,既に平成3年度に行った。平成4年度は,これらを利用して,有機化合物の生分解性の予測に関し次の研究を行った。 1、化合物の構造記述子の自動抽出ーQSAR解析により信頼性の高い推算式を創出するためには,生分解性に寄与すると思われる構造記述子の抽出・選定が極めて重要である。基本的な記述子として分子量,疎水性,特徴的な原子種,官能基,近接効果及び炭素鎖長を用いた。また拡張記述子として官能基や部分構造の結合関係,及び加水分解されたフラクションについての基本的記述子をこれに加えた。以上の記述子は,化合物の構造時を画像入力するとコンピュータが自動的に抽出する。 2、鎖状化合物の生分解性推算式の創出ー463化合物の化審法による生分解性データのQSARをFALSを用いて解析し,記述子39個を含む推算式を創出した。信頼性は,正識別率90.7%,リーブワンアウト法による正予測率84.7%であった。 3、単環化合物の生分解性推算式の創出ー796化合物の化審法による生分解性データを解析し,35個の記述子を含む推算式を創出した。信頼性は,正識別率93.3%.正予測率90.5%であった。 以上の成果の一部は,第20回構造活性相関シンポジウム(1992年11月,京都)で発表した。
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