研究概要 |
構造的に多様な有機化学物質の有害性を,その化学構造から予測するために,既存データの定量的構造活性相関(QSAR)を解析し,信頼性の高い推算式を創出しすることを目的とする。平成5年度は,主として発癌性並びに変異原性の予測に関し研究を行った。 1。データの収集及び発癌性の解析:発癌性に関しては多種多様のデータが報告されているが,中でも信頼性の高いものとして,U.S.National Toxicology Programにより行われたげっ歯類の発癌性試験の成績データを使用した。ほとんどの化合物に変異原性の有無が記載されており,これによって細分化したサブセットについても解析を行った。構造記述子としては,分子量や疎水性定数のほか,部分構造に関する数量変数及びダミー変数を用いた。 2。発癌性相関モデル(予測式)の創出と信頼性評価:6種類の化合物セットについて解析を行った結果,良好な相関モデル(予測式)が得られた。判別の誤りのうち,発癌性を非発癌性と誤るfalse negativeが特に問題と思われるが,false negativeは6セットすべてが識別で5%以下,leave-one-out予測でも10%以下であった。とくに変異原性の有無であらかじめ化合物を分けた場合の予測モデルでは,識別で0.0〜1.5%,予測でも3.6〜7.6%と良好な値を示した。 3。変異原性の予測:変異原性もコンピュータによるQSARに基づいた予測が可能である。今回NTPのデータをFALSで解析し,良好な予測モデルを得た。適中率は識別95.5%,予測86.8%と極めて良い結果であった。
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