本研究は、近年、医学、生物学的に重要視されているスーパーオキシドラジカル(O^-_2)を複雑な系においても測定しうる自動測定システムを製作し、本システムを種々のO^-_2生成系の測定に応用することを最終目標にしている。平成4年度では、不安定なO^-_2を捕獲定量する自動測定システム(pH-Jump法によるO^-_2自動測定システム)を、白血球や、白血球のO^-_2生成を司るNADPH酸化酵素から産生されるO^-_2の定量に応用した。(1)白血球系:4×10^6個の白血球を37℃で1分間刺激剤であるミリスチン酸塩で刺激し、産生されたO^-_2を測定した。休止期白血球からはg=2.005付近に小さな対称形のESRシグナルが現れるが、これはO^-_2以外の常磁性物質によるものであるため、これをバックグラウンドとして差し引き、定常的に産生されるO^-_2を定量した。その結果、10^7個の白血球から定常的に産生されるO^-_2量(O^-_2の定常濃度)は、0.46μMであった。この系から産生される全O^-_2量をシトクロムc還元法を用いて測定すると1分間に46nmolのO^-_2が産生されており、以上の結果から、産生されたほとんど全てのO^-_2が、不均化反応で過酸化水素に変換されていることが明かとなった。(2)NADPH酸化酵素:白血球のO^-_2産生を司っているFAD酵素であるNADPH酸化酵素を等電点電気泳動法を用いて分離し、O^-_2の産生能をpH-jump法で評価した。このNADPH酸化酵素は、electron acceptorを直接還元する性質があるため、従来のシトクロムc還元法ではO^-_2生成量を正確に評価することが出来ず、本pH-jump法でのみ評価が可能であった。 以上の研究以外に、ニトロソベンゼンなどのニトロソ化合物が生体内に取り込まれた際、体内の還元物質によりニトロソ化合物がhydronitroxideラジカルに還元されることを見いだした。このラジカルから一電子が酸素に渡り、生体内でO^-_2が産生されるのをpH-jump法を用いて証明することが出来た。
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