平成3年度は、55kーDa多機能蛋白質(55kーMFP)の機能のうち、特に、生理活性蛋白質の機能発現に必要な立体構造の形成に重要な役割を果たしていると考えられるProtein Disulfite Isomerase(PDI)活性について、活性中心及び甲状腺ホルモンによる発現調節機構について検討した。 55kーMFPのアミノ酸配列の中で、Thioredoxinからの類推によりPDI活性中心と考えられている2箇所の部位のうち、Nー末端側にpoint mutationを起こさせたcDNAを大腸菌に組み込み、産生された蛋白質を精製し、PDI活性を正常蛋白質と比較した。その結果、変異蛋白質のPDI活性は半分に減少していたことから、推測されていた活性部位の各々がPDI活性を持つことが明らかになった。一方。既に我々はPDI活性が甲状腺ホルモン、特に活性型であるトリヨ-ドサイロニン(T_3)で抑制されることを見いだしているので、PDI活性とT_3結合活性との関係を明らかにするために、55KーMFPの甲状腺ホルモン結合部位の検索を行なった。[ ^<125>I]Bromoacetyl T_3(BrAc[ ^<125>I]T_3)でアフィニティラベルした55kーMFPのpeptide mappingを行ない、標識ペプチドのアミノ酸配列の同定を行ない、どのアミノ酸にBrAc[ ^<125>I]T_3が結合しているか検索した。その結果、T_3はNー末端側のPDI活性中心に含まれるCys残基に結合することが明らかになった。従って、甲状腺ホルモンは55kーMFPのPDI活性中心に結合することによって、PDI活性を抑制的に制御していることが明らかになった。
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