生理活性を持つ蛋白質が活性を発現するためには、S-S架橋による立体構造の形成、糖鎖修飾などの転写後修飾が重要である。私達は組織の膜分画から精製した55k-Daの甲状腺ホルモン(T_3)結合蛋白質(55k-MFP)がS-S架橋形成に重要なProtein Disulfide Isomerase(PDI)、Hydroxyprolineの生合成酵素である4-Proline Hydroxylaseのβ鎖、蛋白質に糖鎖を結合する位置を認織するOligosaccharyltransferaseのGlycosylation site binding proteinと同一であることを明らかにした。本研究では、典型的な多機能蛋白質である55k-MFPのPDI活性に注目し、その活性中心の同定及び甲状腺ホルモンによる活性発現調節機構について検討した。55k-MFPの2ケ所のPDI活性中心と想定されている部位のうち、N-末端側に点異変を起こさせたc-DNAを大腸菌に組み込み、変異蛋白質を精製し、正常蛋白質とPDI活性を比較した。変異蛋白質のPDI活性は半分に減少したことから、惟測されていた活性部位の各々がPDI活性を持つことが明らかになった。一方、我々はPDI活性がT_3で抑制されることを見いだしたので、PDI活性とT_3結合活性との関係を明らかにするために、[^<125>I]Bromoacety1 T_3(BrAc[^<125>I]T_3)でアフィニティラベルした55k-MFPのPeptide Mappingを行ない、標識ペプチドのアミノ酸配列の同定を行ない、どのアミノ酸にBrAc[^<125>I]T^3が結合しているか検索した。その結果、T_3はN-末端側のPDI活性中心に含まれるCys残基に結合することが明らかになった。従って、T_3は55k-MFPのPDI活性中心に結合してPDI活性を抑制的に制御していることが明らかになった。
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