研究概要 |
大腸菌をナメジオン(2-methy1-1,4-naphthoquinone)存在下に増殖させると、細胞質にNADHに特異的で反応にFMNを必要とするNADH-quinonereductase(NQR)が誘導されることを発見した。この酵素は動物細胞で報告されているDT-ジアホラーゼと類似しており、酸素毒性を軽減する酵素として機能する可能性が高い。そこで、本酵素の誘導条件を詳細に検討し、特に本酵素の誘導に必要な誘導基質の化学構造について調査した。ナフトキノン誘導体として9種類、ベンゾキノン誘導体として7種類、フェノール系の抗酸化剤として3種類の化合物について、NQRおよびsuperoxide dismutase(SOD)の誘導能を測定した。その結果、NQRは2位にアルキル基を持つ1,4-quinone構造によって特異的に誘導された。これらの化合物はSODも誘導するが、SODは他のNQRを誘導しない化合物によっても誘導される。従って、NQRとSODに対する誘導シグナルは明らかに異なり、NQR誘導には特定の化学構造が必須であることが判明した。一方、動物細胞のDT-ジアホラーゼについては、Michael reaction acceptorとなる化合物が誘導基質である事が報告されている。そこで、これらの化合物について大腸菌のNQR誘導の可能性について調べた所、2、3の化合物で有意の誘導活性が認められた。特に、誘導体の高い2-methylene-4-butyrolactoneによって誘導されるキノン代謝酵素について、詳細に検討した所、新しい酵素としてFMNを必要としないNQRおよびNADPHと特異的に反応するキノン還元酵素の誘導が確認された。これらの酵素はメナジオンでは誘導されず、酵素誘導のシグナルも異なっていた。これらの酵素が細胞内においてどのような役割を果たしているのか、今の所不明であり、今後特定の化合物による誘導機構の詳細と生理的役割との関係についてさらに検討する必要がある。
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