研究概要 |
シナプス小胞における伝達物質の輸送系に関し以下の結果を得た。 (1)モノアミン輸送系及びGABA輸送系はH^+との逆輸送系であり、グルクミン酸輸送系は膜電位により駆勤される。すなわち,駆勤エネルギ-の観点から伝達物質輸送系は2つに分類できる。(2)大腸菌のFタイプATPア-ゼ(H^+ポンプ)の簡便な精製法を確立し、モノアミン輸送系との共再構成を構築した。両者をリポソ-ムに組み込むと,モノアミン輸送系はFタイプATPア-ゼのエネルギ-を利用し,モノアミンを能動的に輸送するようになった。この実験系の確立によって,輸送蛋白の精製が可能になった。(3)神経伝達阻害剤として知られるブロモクリプチンとAH5183が,シナプス小胞に形成されるH^+の濃度勾配を消失させる脱共役剤として作用する事を見い出した。その結果シナプス小胞は伝達物質を蓄積させる事が出来なくなり、この脱共役作用が伝達阻害の一因である可能性を指適した。(4)VタイプのH^+ーATPア-ゼがシナプス小胞の主要構成蛋白である事を示した。又このATPア-ゼの親水性サブユニット群が直径10nmの球状をしている事を見い出した。(5)このATPア-ゼのサブユニット(16KDa)のcDNAをクロ-ニングし、その一次構造を推定した。以上、シナプス小胞における伝達物質輸送を司る各因子の生化学的解折を進めている。これ以外に,V型ATPア-ゼの特異的阻害剤バフィロマイシンを用い、培養細胞レベルでV型ATPア-ゼの生理機能の探索も行っている。本年度は,リソゾ-ム内の酸性pHが確かにV型ATPア-ゼにより行われている事,酸性pHリソゾ-ム内の蛋白分解に必須である事を見い出した。
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