研究概要 |
腸炎ビブリオの細胞膜のATP合成系と能動輸送系について、以下の点を明らかにした。 1.ATP合成系について。 腸炎ビブリオのH^+ー輸送性ATPaseの欠損変異株を用い、以下の結果を得た。この変異株は、乳酸を単一炭素源としてpH8.5において好気的条件下では生育できたが、嫌気的条件下では生育できなかった。また、呼吸鎖Na^+ポンプの働くpH8.5では、H^+コンダクタ-の有無に関わらず乳酸を炭素源として好気的条件下で生育できたが、Na^+ポンプの働かないpH7.5では生育できなかった。これらの結果は、Na^+を共役カチオンとする酸化的リン酸化が行われていることを示唆する。実際、ATPを枯混させた細胞を用い、内向きの人工的なNa^+濃度勾配をかけたところATP合成が観察された。一方、PCR法によるH^+ー輸送性ATPaseの遺伝子クロ-ニングを行い、同遺伝子を破壊した遺伝子破壊株を生製した。この株においては、Westernブロット法で調べたところ、H^+ー輸送性ATPaseのα,β両サブユニットは全く検出されなかった。この株においても上記と同様の結果が得られた。従って、腸炎ビブリオにはH^+を共役カチオンとする酸化的リン酸化系の他に、Na^+を共役カチオンとする酸化的リン酸化系も存在することになる。 2.アデノシン・フォルマイシン輸送系について。 腸炎ビブリオのアデノシン・フォルマイシン輸送系がNa^+およびH^+を同時に共役カチオンとするユニ-クな能動輸送系であることを明らかにした。また、この輸送系の遺伝子のクロ-ニングを行った。
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