著者らはこれまでの研究で四塩化炭素による肝障害マウスの血漿並びに障害肝中に肝再生に先行して肝細胞増殖因子(mHGF)が著しく増加することを見出し、同障害肝の上清画分から本増殖因子を約28万倍に精製してその諸性質を明らかにしてきた。すなわち、mHGFは6.2万と3.1万のポリペプチドから成るヘテロダイマ-であり、ヒト肝細胞増殖因子(hHGF)と極めて類似した性質を有するが、その肝細胞殖刺激活性は抗hHGF抗体によって抑制されないことからhHGFとは一次構造が異なるものと考えられる。今年度の研究では、まず、より大量のmHGFを得るための検討を行った。その結果、高濃度(1.7M)の食塩を含んだ緩衝液で障害肝をホモジナイズしてmHGFを抽出すると、食塩を添加しない緩衝液を使用する従来の方法よりも5〜10倍多量のmHGFが得られることを見出した。 mHGFはへパリンに強い親和性を示すので、おそらく細胞外に分泌されたmHGFは大部分が細胞表面や細胞外マトリックス中のヘパラン硫酸をはじめとするグリコサミノグリカンと結合した状態で存在し、それが高濃度の食塩で遊離してくるものと思われる。高濃度食塩による障害肝抽出液中のmHGFレベルは、四塩化炭素投与後24時間で最大値に達し、この値が48時間まで持続したが、肝重量は48時間でやや増加したので肝臓当りの総活性は投与後48時間で最も高かった。以上のようにして抽出したmHGFを著者らが既に確立した方法し抽出液の硫安分画、アフィゲルブル-、へパリンーセファロ-ス及びSーセファロ-スクロマトグラフィ-の4段階より成る)によって収率よく精製することができた。
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