太陽光そのものの遺伝子損傷作用の塩基特異性や塩基配列特異性を知るため、一本鎖DNAを持つファ-ジであるM13mp2を用い、太陽光による変異のスペクトラムを調べ、太陽光による変異の特異性を検討した。 M13mp2ファ-ジをM9緩衝液に懸濁し、晴天の屋外で正午前後に1〜2時間太陽光を照射した。その結果、ファ-ジの生存率は0.3ー2%に減少した。この時、変異率は、SOS機能を欠くNR9099株を指示菌として用いた場合でも、UV照射を行ってSOS機能を誘導したCSH50株を指示菌とした場合でも、約10倍ないしそれ以上の上昇が見られた。 そこで、得られた変異株のDNA塩基配列を調べたところ、NR9099株を用いて得られた変異株中53株について、およびUV照射したCSH50株を用いて得られた変異株中78株について、変異箇所が決定された。その結果、変異の大部分はグアニンのtramsversionであり、中でもシトシンへの変化が多かった。この結果は、太陽光がDNA中のグアニン塩基に未知の損傷を与えることを示唆している。そこで、熱変性した仔牛胸腺DNAに太陽光照射し、ヌクレオシドまで分解して調べたところ、活性酸素の作用により生ずる8ーOHーグアニンが検出された。 このものを含め、グアニンの酸化物が、大陽光による変異の原因になっている可能性がある。
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