太陽光が突然変異誘発能力があることは良く知られており、ヒトの皮膚がんの原因になっていると信じられている。自然の太陽光による変異の特異性を調べるためにM13mp2ファージを太陽光に曝し、そのlacZα領域の変異を解析し、変異のスペクトラムを調べた。決定された変異の大部分がグアニンのトランスバージョン、特にグアニンからシトシンへの変化だった。この結果は太陽光がDNA上にグアニン特異的な損傷を与えている可能性を示している。 そこで、グアニンの酸化的損傷として広く生成が確認されている、8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-oxodG)を分析した。裸のDNAまたはM13mp2ファージを太陽光照射をすると、DNA中の8-oxodGが増加した。また、260nmから360nmの単色光をDNAに照射した実験から、DNAへの紫外光の吸収自身が8-oxoG生成の原因となっていることが示された。ただし、334nm、365nmのUVA領域の光でもかなりの8-oxoGの生成が観察された。その収量はこの波長領域でのDNAの吸収から予想されるよりも大きいのでDNAへの紫外光の吸収以外のメカニズムも考える必要があり、太陽光による8-oxodGの生成にはこのメカニズムが働いている可能性が高い。しかしながら、太陽光照射による8-oxodGの生成量は10^5ヌクレオチドに1分子程度であり、他の損傷も検討していく必要があると考えている。 また、M13mp2ファージをUVB(312nm)照射した場合、まだ例数は少ないが太陽光照射とはことなりピリミジンの繰り返し部位での変異が多く観察された。太陽光の作用がUVBとは異なっている可能性を示している。
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