○Microdialysis法の定量性および即時性について 予めmicrodialysis用プロ-ブを挿入したラットに、カフェインのラベル体を持続注入し、血液、脳、および脳脊髄液中の薬物濃度が一定となるように設定した(血漿中濃度範囲0.1〜280nmol/ml、5段階濃度)。その後、脳細胞間液および脊髄液を透析により回収した。透析液の回収は30秒から10分間隔で行った。比較として、脳組織および脳脊髄液の直接採取も行った。各サンプル中の未変化体カフェイン濃度を測定し、Microdialysisによる回収率(透析液中薬物濃度/直接採取した脳又は脳脊髄液中薬物濃度)を算出した。いずれの設定濃度、回収時間においても、ほぼ一定の回収率(脳10.9%、脳脊髄液13.1%)が得られた。即ち、本法は予め回収率を求めることにより、生体微小領域の薬物濃度およびその経時変化を定量的かつ即時的(30秒以上)に測定することが可能である。 ○カフェインの脳移行および脳内挙動 Microdialysisを、カフェイン急速単回静注投与後の、脳、および脳脊髄液中の経時的な濃度測定に応用した。透析液中薬物濃度を回収率で補正した値は、実測の脳組織及び脳脊髄液中薬物濃度に一致した。次に、カフェインの脳内挙動について検討した。脳ー脊液間のカフェインの移行および脳組織中におけるカフェインの血液を介さない拡散は、試験管内およびmicrodialysisを用いたin vitroの実験において、ほぼ無視しうる程度と考えられた。これらの知見を基に、血漿、脳組織および脳脊髄液中薬物濃度ー時間推移をコンパ-トモデルを構築し、薬物速度論的に解析した。計算により得られた濃度推移は、実測値に一致し、モデルおよび挙動解析の妥当が示唆された。
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