マイクロダイアリシスによる回収率、即ち組織濃度に対する透析液中濃度比を組織濃度を種々変化させた定常状態で測定したところ、何れの濃度でも一定の回収率が得られることがわかった。また、透析時間30秒以上において、薬物濃度の定量は可能であった。カフェインを静注後、脳組織や脳脊髄液内濃度を直接単離して測定した場合と、マイクロダイアリシスにより測定し回収率で補正した値は一致した。以上、カフェインの組織細胞間液中の濃度変化を経時的にまた定量的に測定することが可能であることが示された。 さらに、カフェインの脳内挙動、即ち血液-脳組織、血液-脳脊髄液、脳組織-悩脊髄液間移行、および脳内拡散等を速度論的に明らかにすることを試みた。脳組織内における拡散速度を測定した場合、脳組織から血液への移行が優先し、組織内での拡散はほぼ無視される程度であった。脳組織-脳脊髄液間移行に関しても、生体の場合ほぼ無視できる程度のものと考えられ、血液間との移行が優先されるという知見が得られた。以上の知見から、血液-脳組織間および血液-脳脊髄液間の移行のみを考慮した速度論モデルにより、単回静注投与したカフェインの濃度推移を解析したところ、良好にシュミレートすることが可能となった。 その他、マイクロダイアリシスの有用性について検討したところ、薬物がカフェイン、サリチル酸およびヒスタミンのように比較的水溶性の場合には、プローブ内透析液への薬物の回収率は一定の値を示し、経時的かつ定量的な測定が可能であることがわかった。一方、ロイコトリエンのようにかなり脂溶性の薬物の場合、透析液への回収は全く認められなかった。また、組織細胞内と細胞間液の薬物濃度がいずれの濃度に於ても、一定の濃度比を保つ薬物についてのみ、動態解析への応用が可能と考えられた。
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