研究概要 |
Human immunodeficiency virus type1(HIVー1)を便宜上エイズウイルスと呼ぶ。エイズウイルス遺伝子の調節遺伝子群(td,rev,nef等)のうち、抑制遺伝子と考えられている遺伝子としてnef geneがある。Nef gene遺伝子産物、p27^<nef>タンパク質はHIVー1ウイルス感染細胞の分裂・増殖を抑制すると考えられているがその作用機構は全く解明されていない。逆にin vivoにおいては、エイズ発症のための促進因子ではないかと推察されている。そこで申請者はp27^<nef>タンパク質のHIVー1感染・エイズ発症における役割を調べるために、まずp27^<nef>タンパク質を大量に調製するためのp27^<nef>タンパク質の発現組み換え体を作製した。p27^<nef>を組み込んだプラスミドをCOSー7細胞にトランスフェクトしてp27^<nef>タンパク質を調製し、そのタンパク質の同定はウエスタンイムノブロット法で行なった。このp27^<nef>タンパク質の遺伝子塩基配列から、このタンパク質のアミノ末端はミリストイル化を受けることが推定されているので、【 ^3H】ミリスチン酸存在下、この細胞を培養し、Nーミリストイリp27^<nef>タンパク質をフルオログラフィ-法及び放射免疫沈降法により分析した。その結果、このタンパク質はミリストイル化を受け、一部はアミノ末端残基近傍が脱離して分子量が小さくなったp25^<nef>も同時に検出することができた。 上記のようにp27^<nef>タンパク質の分析法を確立した後、次にHIVー1感染細胞を用いてp27^<nef>の分析を行なって。HIVー1の持続産生細胞(CEMLAV)及び初感染細胞を用いて、p27^<nef>の発現の有無を調べた。初感染系では感染初期(6〜12hr)にp27^<nef>タンパク質の発現が認められたが、HIVー1の持続産生細胞(CEMLAV)では、p27^<nef>の発現は全く認められなかった。CEMLAV細胞は長期培養するとよく経験することであるが、分裂・増殖速度が低下し、実験に供用できない場合がある。この分裂・増殖能の低下したCEMLAVを常法により可溶化してタンパク質を分析すると、p27^<nef>が明らかに検出することができた。p27^<nef>タンパク質の発現機構は現在未だ明確でない。次年度、p27^<nef>タンパク質の発現条件を調節遺伝子に作用すると考えられる種々の化合物を用いて解明していきたい。
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