研究概要 |
HIV-1ウイルスの遺伝子は約9.2Kbpからなり、遺伝子構造上5′上流及び3′下流にタンパク質をコードしない(非コード)領域(Long Terminal Repeats,LTR)から構成され、5′LTRに続いてタンパク質(gag,pol,env)をコードするgag,pol,env遺伝子が並び、その間調節遺伝子群(vif,vpr,vpu,tat,rev,nef)が存在する。 HIV-1ウイルスの増殖に重要な遺伝子としてtat,rev,nef遺伝子があり、tatは爆発的な増殖を促進し、一方nefは増殖を抑制する。revは増殖促進・抑制を調節していると考えられてきたが近年、nefの作用について疑問がもたれ始めている。申請者はnefは遺伝子の作用を明確にするために、本研究を遂行した。nef遺伝子産物p27^<nef>は25-27kDaのタンパク質で、25kDaのタンパク質は第2メチオニンから解読され翻訳されたものである。27kDaのタンパク質のアミノ末端はグリシン残基で長鎖飽和脂肪酸ミリスチン酸によりN-ミリストイル化を受けている。N_-ミリストイル化を受けないNefタンパク質は細胞質あるいは核内に存在すると考えられている。このp27^<nef>タンパク質は分裂・増殖しているHIV-1感染細胞の中にはほとんど検出することができない超微量で現在の検出方法では不可能である。申請者らはある何らかの理由で分裂・増殖速度の低下したHIV-1持続感染細胞中に偶然にp27^<nef>タンパク質を見いだし、種々の培養条件を検討していくうちに、培養温度を37℃から41℃に上げ、1〜2 時間培養すると増殖速度が著しく低下し、p27^<nef>タンパク質の出現を認めることができた。この作用機構は現在まだ明確でないが、熱ショックにより生じたHeat-shockタンパク質がTatの作用抑制したことが考えられる。またこのことはTatタンパク質を抑制することによりTat-Rev-Nefのバランスが壊れ、結果的にnefタンパク質量の上昇をまねいたと推定される。
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