研究概要 |
「目的」遺伝子傷害性を有するキノリン誘導体の代謝活性体が、エナミンエポキシドであるという仮設に基づいて、キノリンのメチル置換体およびハロゲン置換体を合成し、その肝ミクロゾームによる代謝と変異原性との関連を明かに、当該仮設を確認すると同時に、当該仮設を含窒素多環芳香族化合物全般の代謝活性化機構へと展開する事を目的とした。 「結果と考察」1.2位、3位及び4位メチルキノリンの変異原性を調べると、4位置換体で極めて強くなり、2位、3位置換体では逆に極めて弱くなる。しかしながら、主代謝産物は、いずれの場合も、ヒドロキシメチル体であり、従って、これらの代謝経路は解毒過程である事が示唆される。尚、2位及び3位置換体の場合とは異なり、4位置換体では5,6ヂオールが全く生成しない。これは、メチル基のペリ位である5位の酸化が立体障害のため阻害される事を示し、同時に、5,6エポキシドも代謝活性体ではあり得ない事を意味する。 2.強い変異原性を示した4位メチル置換体の3位にハロゲン(弗素、クロルあるいはブロム)を導入すると、その変異原性が全く消失した。この事実もエナミンエポキシド仮設を強く裏付けるものである。 3.キノリン環にベンゼン環を縮合させた誘導体についても、環内窒素原子のα位、β位、あるいはγ位にハロゲン原子を導入するといずれも変異原性が失われ、これらの事実は何れも当該仮設の妥当性を実証するものである。 「展望」本年度の結果からエナミンエポキシド仮設が更に裏付けられたと同時に、医薬品など有用含窒素芳香族化合物から遺伝毒性を除去する為の分子設計上、重要な示唆を与えるものである。
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