研究概要 |
1.〔1β-^3H,4-^<14>C〕-ならびに〔1β-^3H,19-^<14>C〕-アンドロステンジオン(A)を出発原料とし、キャリアーで希釈することなしに次の化学反応に付した。まず、アルカリ条件下過酸化水素によるエポキシ化の後、ギ酸によるエポキシ環開裂反応を行った。生成物をTLCやHPTLCで精製し、目的とする〔1β-^3H,4-^<14>C〕-(^3H/^<14>C=9.2)ならびに〔7-^3H,19-^<14>C〕-(^3H/^<14>C=5.4)4-ヒドロキシA(4-OHA)を得た。これら二重標識4-OHAをヒト胎盤ミクロゾームとNADPH存在下、それぞれインキュベートし、SDS-電気泳動法により生成したアロマターゼ-ステロイド結合体を精製した。その^3H/^<14>C値を求めたところ、4-OHAの19位炭素は結合体に保持されるが、一方、1β-水素は保持されないことが明らかとなった。この結果、従来考えられていた4-OHAの19位酸素化反応とアロマターゼ不活性化の直接的関係が否定されるとともに、1β-水酸化反応等のA環酸素化反応の関与が示唆された。 2.天然基質Aの異性体で共役系4-エン-3-オン構造の代りに5-エン-7-オン構造を持つステロイドが、アロマターゼを比較的強く阻害した(Ki:300nM)。また、このものは、NADPH存在下時間依存的にアロマターゼを不活性化した。すなわち、新規な構造を持つアロマターゼ自殺基質を開発することが出来た。また、Aの6位にアルキル基を導入することにより、アロマターゼに対する親和性が極めて強い強力なアロマターゼ阻害剤(Ki:5〜10nM)となることを見出した。これら結果は、アロマターゼの基質特異性と反応機構を考える上で極めて重要な知見である。
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