研究概要 |
所期の目的をほぼ達成することができた。以下にその概要を示す。 1.代表的なアロマターゼ自殺基質のアンドロスト-4-エン-3,6,17-トリオン(AT)と4-ヒドロキシアンドロステンジオン(4-OHAT)の酵素不活性化機構を検討した。まず、位置および立体選択的二重標識体、〔 ^3H, ^4C〕ATと〔 ^3H, ^4C〕4-OHAを調製し、これらを種々条件下ヒト胎盤ミクロゾームとインキュベートした。その結果、ATは19-hydroxyATと19-oxoATを経て芳香核化すること、アロマターゼ結合体のステロイド部は、ATの1β-プロトン,19-メチル炭素と3個の19-メチルプロトンのうちの1個を保持すること、が明らかとなった。これらより、ATによるアロマターゼ不活性化における19-oxoATの重要な役割が示唆された。一方、4-OHAからのアロマターゼ結合体生成過程では、1β-プロトンが脱離し19-メチル炭素が保持されることより、不活性化機構に新しい知見を加えた。 2.3-デオキシAの6α,7α-シクロプロパン張導体ならびにAの6β-アルキル置換体が強力なアロマターゼ拮抗阻害剤であること、さらには、Aの異性体の5-エン-7-オンステロイドが本酵素の自殺基質であることを見出し、新しい構造活性相関を確立した。また、ATや3-deoxyAの19,19-ジフルオロ体や19-エチニル誘導体が、アロマターゼの自殺基質となることより、3-デオキシ体や6-オキソ体もアロマターゼにより19位酸素化を受けることを明らかにした。 3.〔1β- ^3H〕Aの代りにその16α-水酸化体〔1β- ^3H〕16α-hydroxyAを基質に用いる、新しいヒト胎盤ミクロゾーム中アロマターゼ活性測定法を開発し、より有効な乳ガン治療薬の開発を可能にした。
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