研究概要 |
我々は,トポイソメラ-ゼIの阻害剤であるカンプトテシンとトポイソメラ-ゼIIの阻害剤であるVP16が,発生段階の異る種々のヒト白血病細胞を共通の機構で分化誘導することを明らかにした。またガマの皮膚腺からの分泌液中のブファリンもトポイソメラ-ゼ阻害剤とは異った機構で白血病細胞を分化誘導することを示した。そこで本年度は,VP16,ブファリンおよび最も分化誘導機構の研究が進んでいるオ-ルトランスレチノイン酸(RA)の三種の分化誘導剤を用いて,どの誘導剤の併用が相乗効果があるか,およびこれら分化誘導剤の処理でがん遺伝子の発現に変化があるかを調べた。細胞はヒト白血病U937細胞を用いた。その結果,VP16とRA,およびブファリンとRAの組合せが強い分化誘導の相乗効果を示した。また,RAで前処理してから,試薬を洗浄除去後,VP16存在下で培養した時,およびその逆の順序で処理したとき強く分化が誘導された。またブファリンで前処理してから,RAで後処理しても強く分化が誘導された。次にU937細胞を分化誘導剤で2時間処理し,がん遺伝子mRNAの発現の変化をノ-ザンブロットで調べた。その結果,cーmycとcーfosはRA処理では減少したが,VP16やブファリンによる処理では発現に変化は見られなかった。その他のがん遺伝子,cーraf、cーabl、cーjunもVP16やブファリンによる処理では発現に変化はなかった。VP16やブファリンによる処理で発現の変化する遺伝子をサブトラクション法で調べているが、現在のところ陽性のクロ-ンは得られていない。
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