トポイソメラーゼ阻害剤とレチノイン酸はヒト白血病細胞に対して相乗的に分化を誘導することを見だしたので、併用処理する条件を検討した。ヒト白血病HL60細胞に対して、0-10nMのカンプトテシンまたは0-400nMのVP16とレチノイン酸を併用するか、80nM以上のカプトテシンまたは16muM以上のVP16で前処理してからレチノイン酸で処理すると分化誘導の相乗効果が現れた。レチノイン酸は急性骨髄球性白血病患者の画期的な治療薬として用いられているが、トポイソメラーゼ阻害剤との併用により投与量を減少することができれば副作用を軽減することに有用である。 また、トポイソメラーゼ阻害剤を始め、種々の分化誘導剤は細胞にアポトーシスを誘導することが知られているので、ブファリンに白血病HL60細胞に対するアポトーシス誘導能があるかどうかを調べた。その結果、ブファリンはシグナル伝達系を介して細胞内のトポイソメラーゼIIを阻害し、強力にアポトーシスを誘導した。従って、ブファリンは新しいタイプのトポイソメラーゼII阻害剤であることが明かとなった。また、種々の抗癌剤とトポイソメラーゼ阻害剤との併用で白血病HL60細胞に対するアポトーシスの誘導にも相乗作用を起こすことが出来るかを検討した結果、カプトテシンとVP16またはレチノイン酸とVP16との併用で相乗的にアポトーシスが誘導された。VP16はトポイソメラーゼIIの活性を減少させたが、酵素量には影響を与えなかったので、酵素のpost-translational modificationにより活性に変化を与えたことが示唆された。 トポイソメラーゼ阻害剤が遺伝子の発現に対して与える影響に対しては、白血病HL60細胞をカンプトテシンまたはVP16で処理するとc-mycの発現が減少し、c-fosの発現が増加することが解った。
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