研究概要 |
平成3年度の研究計画として(I)ビタミンAの防御機構の解明、(II)腸管吸収の改善、(III)MTXの抗癌作用へのビタミンAの影響、の3項目についての検討を挙げた。計画(I)および(III)については平成3年度科学研究費補助金の一部で購入した炭酸ガス・インキュベ-タ-および本学細胞培養施設を利用し、in vitro細胞培養系にて検討した。計画(I)については、ラット由来小腸培養細胞IECー6を小腸クリプト細胞のモデルとして用い、その培養系を確立する段階にある。計画(III)については、マウス白血病細胞L1210を用いて、メトトレキサ-ト(MTX)の抗癌作用へのビタミンAの影響を検討した。[ ^3H]ーチミジン,[ ^3H]ーウリジン,[ ^3H]ーロイシンのL1210細胞への取り込みは,MTXあるいはビタミンA単独で抑制されるが,MTXとビタミンA併用の場合には、いずれの取り込みもさらに顕著に抑制されることが判明した。また細胞数の測定によってもL1210細胞増殖についてこれと同様な結果が得られた。計画(II)についてはin vitro,in vivoでの検討を行った。ラットへの投与を(1)対照群(生理食塩水投与),(2)MTX投与群,(3)MTXとビタミンA併用群,(4)ビタミンA投与群とし、Dーグルコ-ス、Dーキシロ-ス、の吸収を検討した。これら処置ラットの摘出反転腸管でのDーグルコ-スの透過はMTX投与群では対照群よりも有意な低下を示し,MTXとビタミンA併用群での変化は有意ではなかった。Dーキシロ-スについてもDーグルコ-スの場合と同様に,MTX投与群のみが対照群より有意な透過性低下を示した。[ ^3H]ーグルコ-スをラットに経口投与し,in vivoでの吸収を検討した。MTX投与群では対照群にくらべて最大血中濃度到達時間に遅れがみられ、最大血中濃度にも低下が認められたが,MTXとビタミンA併用群ではこのような吸収抑制が認められなかった。従って,MTXによる吸収障害はビタミンAの併用によって改善されることがin vitro,in vivoで明かになった。
|