研究課題/領域番号 |
03671073
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
生物系薬学
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
伊藤 文昭 摂南大学, 薬学部, 教授 (80111764)
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研究分担者 |
芝本 さゆみ 摂南大学, 薬学部, 助手 (80178920)
早川 麿紀男 摂南大学, 薬学部, 助手 (30198824)
鈴木 文男 金沢大学, 薬学部, 助教授 (10019672)
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研究期間 (年度) |
1991 – 1992
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キーワード | 細胞増殖 / 細胞運動性 / アラキドン酸 / プロスタグランジン / がん化 / Cキナーゼ |
研究概要 |
癌細胞は、正常細胞が複数の遺伝的変異を積み重ねて段階的な変化を起こした結果、異常増殖するようになった細胞と考えられている。私達は、ゴールデンハムスター(Syrian/golden hamster)胎児由来の正常2倍体細胞を継代培養すると、継代数に依存して悪性形質が発現するようになることを報告しており、この系を利用することにより、癌化の多段階発癌を細胞レベルで追うことを可能にした。本研究では、造腫瘍性を示さない継代数38のゴールデンハムスター細胞(GHEp38)と造腫瘍性を示すようになった継代数69の細胞(GHEp69)の増殖と運動性に対するアラキドン酸の作用を調ベた。アラキドン酸はp38細胞の増殖に影響を与えないが、p69細胞の増殖を促進し、がん化に伴いアラキドン酸に対する細胞の増殖応答が変化することが明かとなった。この増殖促進作用は、パルミチン酸では観察されないが、オレイン酸、リノール酸などでも観察された。また、プロスタグランジン合成酵素やCキナーゼのの阻害剤を用いた実験から、アラキドン酸などの作用はプロスタグランジン合成を介さずに、脂肪酸が直接Cキナーゼを活性化することにより引き起こされることが示唆された。一方、ヒト胃がん細胞に対しては、アラキドン酸は増殖促進作用を示さなかったが、ボイデンチャンバーを用いた実験から運動性を著しく促進することが分かった。アラキドン酸はp69細胞の運動性は促進しないので、アラキドン酸の細胞増殖や運動性に対する作用は、がん細胞の種類によって異なっていた。本研究は、プロスタグランジン、アラキドン酸、あるいはアラキドン酸を含めた多種類の脂肪酸が、細胞増殖・運動性に影響を与えることを明かにしており、ロイコトルエンも含めたこれら分子の細胞内シグナル伝達における役割は興味深い。
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