研究概要 |
前年度の研究で明らかにされた,真菌と動物のラノステロール14α脱メチル化酵素(P450(14DM))がステロール側鎖の構造に対して異なる特異性を示すという事実を基に,この部分に結合すると考えられる構造を有するアゾール化合物について,真菌とラットのP450(14DM)に対する反応性を精製酵素を用いて検討した。ラットから精製したP450(14DM)を得る方法はいまだ確立されていないので,この研究の目的に叶うラットのP450(14DM)を精製する方法を開発した。また,この目的に叶う構造を有するアゾール化合物としては,花王株式会社が合成している一連のイミダゾール誘導体の中から,ラノステロールの側鎖と基本的に同一の構造であるゲラニル基を持つAFK-108およびゲラニル基をプレニルおよびファルネシル基で置換した誘導体(AFK-122およびAFK-110)を選んだ。これらの化合物について,酵母およびラットから精製したP450(14DM)に対する阻害効果を詳細に比較検討し,以下の知見を得た。(1)酵母およびラットのP450(14DM)は共にゲラニル基を持つAFK-108によってもっとも強い阻害を受けた。この事実は,AFK-108のゲラニル基がP450(14DM)の基質結合部位のうちステロール側鎖を認識する部位に結合する可能性を強く示唆するものである。(2)ゲラニル基以外のイソプレノイドを持つAFK-110,122に関しては,酵母とラットのP450(14DM)に対する反応性が異なり,酵母のP450(14DM)はこれらの化合物によっても低濃度で阻害されるのに対して,ラットのP450(14DM)はこれらの化合物に対する感受性が著しく低かった。この事実は,酵母とラットのP450(14DM)がステロール側鎖の構造に対して異なる特異性を示すという前年度の知見に一致するものであり,この部分に結合するような構造を持つアゾール化合物の中には真菌と動物のP450(14DM)に対する親和性を異にするものが存在することを示すものである。
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