研究課題/領域番号 |
03671096
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
辻 彰 金沢大学, 薬学部, 教授 (10019664)
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研究分担者 |
寺崎 哲也 金沢大学, 薬学部, 助教授 (60155463)
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キーワード | 脳腫瘍 / 血液脳関門 / 毛細血管 / 制がん剤 / 血管透過性 / 選択的デリバリ- / 9Lーグリオ-マ / 5ーフルオロウラシル |
研究概要 |
制がん剤の血液脳関門透過性を細胞生理学的に制御することができれば、脳腫瘍の治療に効果的な易透過性の薬剤の病発ばかりでなく、難透過性にすることによって中枢毒性を回避した薬剤の開発が飛躍的に進歩すると考えられる。しかし、制がん剤に限らず薬物の血液脳関門透過機構は未だほとんど解明されていない。そこで本研究は、「制がん剤の血液脳関門透過機構を細胞生理学的に解明する」ことを目的とした。そこで、9Lグリオ-マを脳へ移植後14ー17日を経過した実験脳腫瘍ラット(以下、腫瘍ラット)を用いて、脳腫瘍時における薬物の血管透過性を頚動脈注入法によって測定した。その結果、脳腫瘍部位の毛細血管ではスクロ-スなどの正常脳毛細血管非透過性の低分子量薬物の血管透過性は非特異的に増加していることが分かった。電子顕微鏡像から、腫瘍部位の毛細血管は非腫瘍部位血管のそれと顕著に異なり、末梢組織血管と同様に有窓性構造をとっていることが確認され、細胞間隙経路による薬物透過性が増加していることが裏付けられた。しかし、非腫瘍部位および腫瘍近傍の脳毛細血管構造は正常部位のそれと大差なく、透過性も正常脳と同程度であった。したがって、脳腫瘍において制がん剤の腫瘍部位選択的デリバリ-を行うには、脳毛細血管透過性よりも腫瘍細胞透過性を向上させることが重要であると諏論された。そこで、種々の制がん剤(アドリアマイシン、メトトレキセ-ト、ニムスチン、ラニムスチン、5ーフルオロウラシル)の腫瘍ラットにおける血管透過性および腫瘍細胞膜透過性を測定したところ、5ーフルオロウラシルはこの推論に適合し、非腫瘍部位毛細血管は透過しないで腫瘍血管だけを透過し、腫瘍細胞膜を担体輸送系を介して透過する「脳腫瘍選択的制がん剤」であることが分かった。
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