研究概要 |
我々が開発した光増感反応を応用した内皮損傷動脈血栓モデルを用いて各種抗血栓薬の効果を検討した結果,血栓性閉塞および血栓溶解処置後の再閉塞において血小板活性と血小板由来の血管収縮が大きく関与していることが示唆された.本モデルを用いて,糖尿病,高血圧症,高脂血症ラットにおける血栓形成異常に関与する因子について,血小板凝集能の変化を中心に検討した.糖尿病ラットでは血小板自体の凝集能が亢進しているにもかかわらず,in vivoでの血栓形成は糖尿病発症初期では遅延していた.その原因として,発症初期では血液中での血小板凝集は逆に抑制されており,血液中に何らかの血小板凝集抑制物質が存在していることが示唆された.本物質の単離,同定を試みているが,現段階では明らかになっていない.本件については,今後の課題として継続研究中である.自然発症高血圧ラットでは,血栓形成が著しく遅延していた.降圧処置により血栓形成遅延は有意に短縮したが,なお,正常対照群に比べ有意に遅延していた.血小板凝集能は降圧処置にかかわらず高血圧ラットで低下していた.これらの結果より,高血圧ラットでの著明な血栓形成遅延は血小板凝集能低下に加え,高血圧の直接的(血行力学的)影響により血栓が完全成熟する前に圧により飛ばされるためと思われる.一方,高脂血症ラットでは,血栓形成時間の短縮と血栓溶解後の高い再閉塞率がみられ,これはTXA_2産生の亢進による血小板凝集能亢進と血管収縮促進によることが示唆された.以上,病態における血栓形成異常に関与する因子が各病態により異なることが明かとなった.
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