研究概要 |
本年度は夜間徘廻の動物モデルつまり,サ-カディアンリズムの異常動物モデル作製に努めた。その結果,老令ラットや嗅球摘出ラットでは制限給餌により出現するサ-カディアンリズムの形成が遅れることが明らかとなった。つまり正常動物は制限給餌に伴う運動量の高進が,次の日にエサを与えなくても持続するという学習性の時刻認知が認められたが,モデル動物ではこのような現象は見られなかった(日本薬学会第112年会発表)。この時刻認知に伴うサ-カディアンリズムの形成機構を脳内神経伝達物質の観点から調べている。一方,制限給餌によるサ-カディアンリズム形成の脳内機構について調べる前に,通常の明暗刺激により同調されるサ-カディアンリズムに対する神経伝達物質の受容体刺激薬の作用について検討した。その結果,体内時計の存在場所である視交叉上校へのセロトニン神経の入力のうちセロトニン(5HT)_<1A>受容体制激薬が,このサ-カディアンリズムの位相を変化させうることが明らかとなった(Eur.J.Pharmacol.1992)。またこの5HT_<1A>受容体刺激薬は、視交叉上核神経そのものに作用することも明らかとなった(Eur.d.pharmacal.1992)。したがって,これらの薬物が制限給餌によって出現するサ-カディアンリズムに対してどのような作用を示すかにつき検討する予定である。一方,高度の精神機能が異常をきたすと,つまり精神分裂病や痴呆の患者では夜間徘廻などのリズムの異常が見られる。そこで精神分裂病の動物モデルを作製できる覚醒剤,メタンフェタミンの慢性投与がサ-カディアンリズムを障害するか否かにつき検討した。その結果,メタンフェタミンを飲水に溶解し与えると,運動のリズムが明暗同調条件下にもかかわらず,フリ-ランニング(自由継続)するという明暗非同調性のリズムが観察された(第112年会,日本薬学会発表)。このリズム異常に対する種々の精神分裂病治療薬の作用について検討する予定である。
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