平成3年度内にサーカディアンリズム異常動物を作製し、その体内時計の異常性につき確認した。ラットに一定時刻に制限給餌を行うと、食事性の予知行動が出現する。この新しいサーカディアンリズムは体内時計の存在する視交叉上核に非依存性のリズムであり、社会的な同調性のモデルとなるリズムであることがわかった。またこの予知行動は生後1-2年齢の老齢動物では著明に障害された。この障害に対して種々の脳代謝賦活薬を投与したところ、ビフェメランやセロトニン受容体遮断薬で有意に改善されたが、アレコリンやグルコースでは改善されなかった。このように、老人性痴呆患者に適用しようとしているビフェメランで予知行動の障害が改善されたことは、サーカディアンリズムの同調性を促進させる新規薬物の開発が可能であることを示唆している。つまり臨床上、夜間俳廻等リズム同調性障害を改善できる薬物の開発が可能であることがわかった。また従来、アレコリンなどアセチルコリン関連薬物がいわゆる学習・記憶に関連深いと考えられていたが、今回の研究から、食事性の同調による予知行動にはセロトニン神経系の重要性が示唆された。
|