研究課題/領域番号 |
03671099
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
応用薬理学・医療系薬学
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高濱 和夫 熊本大学, 薬学部, 助教授 (80150548)
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研究分担者 |
甲斐 広文 熊本大学, 薬学部, 助手 (30194658)
宮田 健 熊本大学, 薬学部, 教授 (90040310)
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研究期間 (年度) |
1991 – 1992
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キーワード | 鎮咳薬 / デキストロメトルファン / グリシン受容体 / NMDA受容体 / 咳中枢 / 孤束核 / 脳単一ニューロン / パッチクランプ |
研究概要 |
鎮咳薬デキストロメトルファン(DM)に特異的な結合部位が脳内に存在することが明かとなり、鎮咳薬は麻薬性、非麻薬性にかかわらず、鎮咳作用に加えて強力な新規な抗けいれん作用、抗脳虚血作用などを示すことが報告され注目を集めている。そこで本研究は、新世代中枢作用薬の開発を指向して、未だに全く不明の、鎮咳薬のニューロンレベルでの作用機序の解明を直接の目的として研究を実施し、以下の成績を得た。1.モルモット延髄の咳中枢(刺激により咳を発現する部位)に興奮性アミノ酸受容体のN-メチルアスパラギン酸(NMDA)受容体を遮断するdl-AP5を微量注入すると、咳発現を強く抑制した。一方、抑制性アミノ酸のグリシンの注入では咳の振幅を増強した。2.DMを始め数種の鎮咳薬をイオンフォレシスで投与すると、大脳皮質および海馬の単一神経活動を強く抑制した。3.モルモット延髄孤束核から単離したニューロンにおいて、鎮咳薬はグリシン誘発電流を選択的に抑制した。また、鎮咳薬の中でDMはNMDA誘発電流も抑制したが、麻薬性鎮咳薬のコデインは抑制しなかった。4.DMのグリシン誘発電流抑制作用は、電気生理学的および薬理学的検討の結果、グリシン受容体に対する直接の作用であることが示唆された。5.DMのこの作用は、パッチクランプ法による解析から、グリシン受容体の単一チャネルの開口確立の抑制によることが示唆された。6.マイクロダイアリシス法による解析から、孤束核の数種のアミノ酸の中でグリシンレベルが咳発現の時間帯に有意に増加することがわかった。 以上の成績は、ニューロンレベルにおける鎮咳薬の作用を、一部ではあるが明かにした最初の知見であり、鎮咳薬の作用機序のみならず、咳反射の脳内伝達機構の解明にも貢献するものである。さらに、すべての鎮咳薬がグリシン誘発電流抑制作用を示したことは、注目に値し、グリシン受容体を標的とする鎮咳薬だけでなく、新規の薬理活性をもつ中枢作用薬の開発にとって重要な基礎知見と言える。
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